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学校ってどうなってるの?78~「反復」はなぜ有効か?連関と反復について~

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学校ってどうなってるの?69~「学力低下をどうする?!」第三弾! [1]
で、展開された「学力低下をどうする?!」 で気になっているのは反復。学力を上昇させるには、最近、百ます計算や反復音読などの基礎を何度も繰り返すことで能力アップが図れるとよく聞きます。

さて、反復は、連関記憶を作る核となり、脳内神経細胞のネットワークと神経細胞のつながりの強化を促すと仮説してみよう。

例えば、何かの漢字を覚えようと反復してみた。こんな感じで・・・
・この漢字は、難しいなぁ。とりあえず、書かけるかなぁ?
・もう一度書いてみよう。
・やっぱり書けない。どうやったらかけるんだろう。
・口に出していってみよう。
・今度は、手本を見ずに書いてみよう。
・やっぱりかけない。くやし・・・
・他の漢字も覚えてみよう。
・あれ、この漢字、どこかで見た。
・そういえば、さっきの漢字は、どこかにあった。
・もう一度書いてみよう。
・やった!かけた!
・一日経つとわすれてしまった。
・もう一度書いてみよう。半分かけたなぁ!あんちょこみてみよう。
・もう一回書けば忘れないな?
・これってどんな意味なんだろう?

などなど。反復は、思考の連携を想起させるもの。単に、何回も無意識に書くだけでも、嫌気が差すとかなんとなく覚えたという感覚を持つものだ。

現代の認知心理学・脳科学的にいえば、反復が長期記憶回路に定着するメカニズムの解明?という問いであろうと思われます。記憶とは、脳の何らかの記憶回路の回線を太くして、伝達物質を通りやすくするということ。過去の記憶と成功体験と状況などへの結びつきを強くして、記憶回路に定着してゆくということ。それに反復がなぜ有効なのかどうか?という問いだと思っています。

生物は、外圧を常に受け続けている。どんな生物であれ、外圧を受け、それに適応しようとして可能性を探索して実現し外圧を突破してゆく。その際、内部の活力(活性化)を伴い、活性化しなければ、死滅してしまう。

生物には、外圧状況を認識する外部認識機能と内部欠乏を認識する内部認識機能を持つ。これが、イコールで結ばれたときに、初めて実現するという構造がある。本能の場合は、それが瞬時に行われ、外圧を察知して行動に移るという極めて短期で、瞬時に、反応できる。これも記憶と言えるだろうと私は思う。

 しかし、それらは、本能の範囲内であり、それ以上の外圧の変化には対応できないという欠陥があり、やもすれば、外圧の変化のスピードに適応が追いつかず滅亡・絶滅を招くこともある。

真猿は、集団をつくり、共認機能を生み出した。それは、同類闘争圧力(同類同士が戦うという圧力)の外圧には、本能的に対応できない為、生み出した機能である。

さらに、人類は、極限時代に全的不全に陥り、唯一可能性のある猿からの共認機能を武器に自然と対峙し観念機能を生み出し、極限の生活を乗り切った。

この過程で、記憶機能という外圧=内圧の実現態記録(充足機能)が、塗り重ねられてきている。るいネットでは原核生物でも記憶が存在するとする説■過去を“記憶”するのは生命原理のひとつ(土山さん) [2]もあり、納得がいく。細胞膜の選択透過機能も記憶とも呼べる可能性はある。

■さて、記憶の定着に、反復がなぜ重要なのか?使えば使うほど脳の回路が使われ太くなり、思い出しやすくなるということはあると思われるが、それだけでは、機械的で、細胞膜の透過性も本能で生きる動物と同じレベルであり、猿・人としては、もういくつか?の反復による記憶固定度強化のメカニズムがあるように思われます。それを解く鍵は、猿・人類特有の共認機能にあると思われます。

■共認機能とは、簡単に言えば「心」。相手と自分とを同化して、相手と自分を重ね合わせて、理解する機能である。相手とは、人だけではなく、他の生物でも自然でもなんでも対象となりえます。最も対象となるのは、先ほどの外圧=現実の課題。また、共認機能とは、ネットワーク機能。多くの対象とネットワーク=連関を構築して、外圧=現実の課題を突破してゆくこと。反復することで、この対象への同化を高め、ネットワーク=連関を構築してゆくことができるのが猿と人類である。

■猿と人類の違いは、観念機能を持つかどうか?であります。観念機能とは簡単にいうと「言葉」。「言葉」により頭の中で、多くの対象の状況を把握することが可能です。人類が言葉を反復することは、記憶に定着するということ。入力と出力を反復して、対象と何回も同化を試み状況を言葉で把握するということ。特に入力ではなく出力することが、反復することの意味を深く探ってくれるようだ。

このように、人が反復して記憶に定着するということは、この共認と観念機能をのネットワークの訓練することであり、対象への同化度を高め、脳内のネットワーク=連関度を高めていく、最初のステップが反復なのだろうと思います。

さて、みなさん。最近、反復していますか?

【まなぶ(学ぶ)はまねぶ(真似ぶ)。ならう(習う)はなれる(慣れる・馴れる・倣う)。】

などと言われています。実感を伴い、いろんなことを学んで習って繰り返して真似してみよう。それが、社会でも学校でも会社でも家庭でも役に立つかも知れません。

記憶回路のことをもっと知りたい方は、続きをどうぞ。
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◆記憶と共認機能と反復は密接な関係があるようだ。

■過去を“記憶”するのは生命原理のひとつ(土山さん) [2]
生命の起源である原核生物にも‘記憶’は存在すると考えられます。

 単細胞生物の場合は中枢神経などもちろん無いのですが、大雑把に言って、細胞膜のレセプターに特定の物質が結合するとイオンチャンネルが開いて外部刺激が細胞内の電気シグナルに変換されて細胞質運動やDNAの呼び出しが起こります。このしくみが生物の認識機能の原初形態ですが、レセプター毎に結合する物質はほぼ決まっており、また結合した物質によって行動パターンも概ね決まっています。また単細胞生物の光に対する反応では、例えば正の走光性を示す単細胞生物でも光の強さが一定の環境では、最初は光に向かって反応してもしばらくすると反応しなくなります。つまり、最初の光の状態を前提にして(≒記憶して)、そこからの状況変化を頼りに行動していることになります。

 単細胞生物の場合は、認識(=探索)と記憶を一体のものとして考える方が適切ですが、少なくとも時系列上の前段階の外部状況を(人間で言えば短期記憶orエピソード記憶風に)記憶している事実は観察されます。

 また、すべての生物に備わっている各種本能についても、内識・外識と行動パターンをほぼ一対一対応させている機構ですし、そもそも生まれてすぐ働き出す本能は死ぬまで不変であることから、これも記憶の一種(同じく強いて人間に例えれば長期記憶?)と見なせます。

 このように考えてくると、まず、時系列上の過去の状況を‘記憶’として保持することで、適応上最も優れた行動を起こすことができるというのは生物に普遍的であると言えそうです。しかし、人間を除いては(サルや高等哺乳類は微妙な点も若干残りますが)行動パターンがほぼ固定化されていることからも明らかなように、過去から現在(一連の行動が終わるまでの近未来まで)に向けての時系列上の思考の流れは不可逆であることは、本田さんや関連投稿をされている皆さんのご指摘のとおり(トライ&エラー)です。

※ 余談ですが、シナプス(脳内ホルモン)を介して神経線維を電気シグナルが流れるしくみは、単細胞生物の細胞膜と細胞質の情報伝達のメカニズムと大差ないので、この神経細胞に備わった機能は40億年近く前の原核生物段階にも類似した機能があったと考える方が自然ですし、ネットワーク化された脳細胞・神経細胞はそれ自体が記憶回路だと言えると思います。

■時間の拘束からの行為の開放が超越統合を生む。(本田さん) [3]

本能の統合律(手順律等)では、探索→判断→行為が時間軸に拘束され(時間の流れのままで)、かつ現在形だと思います。大雑把に言って、行為する動物にはこうすればこういう結果を生むというような思考はないと思っています。

むしろ、数多くの試行のの結果、成功したときのみ本能充足をえられた結果、それを実現できた回路のつながりが強くなる。そして、、次からはその回路を利用した行動が再現しやすくなり、成功確率が上がる、ということではないかと思っています。

これは、人間にたとえると無意識的行動に近いのではないかと考えています。たとえば人間でも、反射神経は本能回路に近く、外部刺激の受容(対象認識)から行動までが一つながりの前後関係で、時間の流れに拘束されています。

それに対して、観念機能は大きく位相が異なると思います。大きくは、時間軸にそった一連の行動を制御できると言うことだと思います。たとえば、判断を保留にするとか頭の中で行動結果をシュミレーションできる、ことなどはこの例になると思います。

また、時間の拘束からの自由度は本能<共認<<観念ということではないかと思います。

逆にいえば、時間という感覚も、このような時間の拘束から行為を解放すことができて初めて意識的に捉えることが出来たのではないかと思っています。また、時間の拘束を超えて超越的自然を対象化したものが観念の原型ではないかと考えています。

■ 新理論を喚起させることと同化について。(リバーバンクさん) [4]
認知心理学では、人間の頭の働きを、長期記憶貯蔵庫と短期記憶貯蔵庫の二つの貯蔵庫でモデル化しています。頭の中に入ってきた情報は、短期記憶貯蔵庫で一時的に保管され、必要に応じて長期記憶貯蔵庫から関連情報を引き出したり、戻したりしているとするのです。

 短期記憶貯蔵庫には、少しの情報を(7±2個)約20秒ほど蓄えておくことができます。(話はそれるかもしれませんが瞬間記憶能力をもってるという人は短期記憶がかなり優れている人だそうです。) 
 一方、長期記憶貯蔵庫には、ほぼ無制限の情報をほぼ永久的に蓄えておくことができきます。ただし、短期記憶貯蔵庫に入った情報を、長期記憶貯蔵庫に移すには、何度も繰り返しをしたり、特別に強い衝撃を受けなければなりません。(これは計算問題の定着や暗記に関する記憶のさせ方です。)

そこでわかるとは?
 認知心理学的に「わかる」とは、入力された情報を、すでに有する知識に同化させることができるか、あるいはすでに有する知識を使って調整することができることを意味します。ここで、同化とは長期記憶貯蔵庫の中にある情報を組み合わせて、新しい情報を消化することです。また、調整とは、長期記憶貯蔵庫の中にある情報の組み合わせだけでは、消化し切れないときに、長期記憶貯蔵庫の中にある情報を多少変形させたりして、新しい情報を消化することです。情報をうまく同化もしくは調整できればわかったということになります。

ということは、露店で人に同化するためにはもっと新理論やそれに必要な知識を得ないと同化しにくいということです。

では人がもっと知りたいと思うことは?
 人は情報が短期記憶貯蔵庫に入ってくると、長期記憶貯蔵庫の情報で同化もしくは調整しようとします。しかし、必ずしも同化や調整ができるとは限りません。同化も調整もできないと、心理的に不協和の状態になり、人はこれを何とか解決しようとして、調整するための情報を欲しがります。この状態が「もっと知りたい」という状態です。しかし、この状態になるには、同化も調和もできない情報が、多すぎても少なすぎてもいけません。この微妙なバランスをうまく取ることができれば、好奇心を引きつけることができます。しかし、このバランスは人によって異なり、こうすればよいという黄金律はありません。しかし、ないと言い切るとそこまでなのである程度対象となる人と同化できるようになれば、好奇心を引き出せるようにする方法を見つけたいです。

■同類闘争の圧力が柔軟な記憶回路をつくったのでは(村上さん) [5]
生命の場合、適応して生きていくために必要な機能ほど長期に記憶(DNAに記録)されてきているのだと思います。その長期記憶(記録)は、細胞の記憶から神経細胞、脳に至るように外圧の変化に適応し塗り重ね構造により、今まである機能を新しい機能で再統合しています。

ということは、適応に必要なことほど長期的な記憶(記録)に残っていくという構造があるのではないでしょうか。
人類の場合、このDNAに記録されるレベルから、ずっと脳内で記憶している長期記憶、その瞬間瞬間に記憶している短期記憶に分かれます。
長期記憶は、生きていくために必要なことだったり、今までの外圧状況になかった大きなショッキングな出来事だったりします。これらは、何度も思い出すとか使うという繰り返しで脳神経回路の繋がりを太くしていきます。太くなっているから、忘れていたことが、ある環境に置かれた時、ふと思い出すということもあります。

サル・人類は、同類を対象として共認機能をつくる中で、この記憶(記録)回路を同類圧力の変化に応じ、より柔軟につくり上げてきたのだと思います。これが脳の短期・長期記憶回路の組み合わせではないかと思います。

共認内容は外圧状況に応じて常に組み換えていく必要があります。特に同類闘争が一番の外圧であれば、その状況は自然環境と比較にならないほど頻繁に複雑に変化します。常に変化する外圧状況に対して、種として課題を共認し、役割を共認し、評価を共認し生きていくために短期・長期記憶の柔軟回路を生み出したのだと考えられます。

■ 同化(共認)機能の低下=長期記憶の低下=進化不適応態?(廣重さん) [6]
たしかに、過去を“記憶”するのは生命原理のひとつ。
記憶には短期記憶と長期記憶(サル・人間以外の全ての生物に有る?)があります。今現在行っている行動を忘れられたら困るため、行動の連続性を保つためには短期記憶は必要です。
 この短期記憶の一種に、ワーキングメモリというのがあります。この働きは、目や耳から入力される多くの情報を、過去の記憶などから選択的注意によって選ばれた情報を一時的に保持しつつ、適切な行動に導くものです。そしてその行動が実現することにより、それが感情や観念(言葉)と結びついて、(情景含め)長期記憶化されるのではないでしょうか。
 感情により記憶が強化される内容については、以下の投稿が参考になりました。(本田さん)

>それに対して猿と人類では、共認回路のプラス充足感情が支配的になります。これも記憶と関連付けるならば、共認によるプラス充足感情で色づけられた記憶は、強化され思い出しやすいということではないかと思います。
そして、哺乳類と異なり、共認によるその感情と記憶は、その形成過程から、相手と共有することが前提になります。だから、思い出しやすい(=役に立つ)記憶は、みんなが共有し充足できる記憶と言うことになります。

 共認によるその感情と記憶強化=長期記憶。感情がからまなくても人工的でも記憶は出来ますが、かなり労力が要ります。これは感覚的にわかり易いです。

 この視点で考えれば、サイレントベイビーやいじめによる期待封鎖による同化機能の低下は長期記憶=共有し充足できる記憶の低下を引き起こしているといえるのではないか?
 過去の長期記憶=共認内容をもとに状況を把握したり、実現可能性を予測することで現実リアリティを感じることが出来る。
同化(共認)機能低下のため、皆が共有し充足できる記憶に残らないとすれば、これって生物にとって、特に共認機能にて進化したサル・人類にとって致命傷なんだと感じました。

■共認充足が脳を活性化させる(酒井さん) [7]
記憶(特に短期記憶能力)は海馬体が司っており、この部分と脳神経細胞の恒常的な連絡が「記憶」と言う構造を作っています。

大脳辺縁系の側頭葉内側部に属する“海馬体”は短期記憶を保持し、またそれを長期記憶に変換する重要な部位であると考えられており、短期記憶から長期記憶に「固定」するためには、神経の形態を変化させ、その変化した新しい回路に記憶を貯蔵することが必要となります。

神経細胞のシナプスが、発芽により新たな回路を形成したり、神経伝達物質の放出量を増加したりしながら記憶の貯蔵と固定化を助けます。脳細胞間の伝達物質の放出量には強弱があり、例えば伝達物質の放出量、時間が少ないとき脳細胞間の連絡は瞬間的であるが、放出量、時間が一定量を超すとその情報伝達が完了した後でも継続的な情報伝達維持状態がつくられます。

記憶をつかさどる脳細胞は一旦死んでしまうと、その細胞が関与した記憶は同時に失われます。記憶障害を克服する方法は、失われる記憶を新規の記憶により埋め合わせする方法しかありませんが、脳細胞の働きを活性化することで記憶に限らず様々な情緒性や認識能力を向上させることが可能となります。脳は使えば使うほど進化していくということです。

期待応望の圧力が共認充足を生み出し、脳細胞を活性化させることは明らかです。固定観念に囚われた思考停止は、脳機能を退化させていくだけだと思います。

■記憶力を高めるメソッド(記憶のメカニズムの1)(吉国さん) [8]
『記憶力』というとすぐ『暗記=覚える力』と片付けてしまいそうだが、『創造』といえども決してゼロからの出発ではない。現象事実や状況認識(の記憶)を構造化したり、過去の経験や学習してきた知の体系と関連付けられて実現されるものがほとんどだろう。その意味では『認識力』と不可分の、始原生物以来極めて重要な適応能力と言ってよい。
特に観念機能の発達した人類にとって、外圧適応上重要な知をどれだけ長期間保持(長期記憶)し取り出せるか、また瑣末な情報をどれだけ速やかに忘れていくかは、進化上極めて重要な機能であったはずだ。忘却も記憶と表裏一体のものと考えられる。

『認識力』の向上と『認識のパラダイム転換』を迫られている現在だが、『記憶』のメカニズムと、『記憶力(忘却力)』を高めるメソッドについて検討する。もちろん、このことは子供たちの『脳力』を高める教授法にも繋がっていくと思う。

まず、現在の脳科学で考えられている『記憶』のメカニズムを、本田さんの投稿を参考にしながら紹介、検討する。

>記憶は、シナプスを介した神経細胞同士の物理的ネットワークと、そのネットワーク内での神経細胞の間の信号(電気.化学信号)の伝わりやすさとして保存されている、と考えられます。

そして、神経細胞内を流れる電気信号は、端から端まで流れるか、流れないかの単純な二つの現象だけです。次に、ある神経細胞に送られてきたシナプス経由の信号は、上記の電気信号(活動電位:強くハッキリしている)とは別の、小さな電気信号(シナプス電位)に変わります。<

シナプス前ニューロンにあるシナプス小胞から神経伝達物質(グルタミン酸やアセチルコリンなど)が、隣のシナプス後ニューロンの軸索や樹状突起との間にあるシナプス(間隙)に放出される。神経伝達物質がシナプス後細胞の受容体に結合すると、シナプス後細胞の膜が局所的な脱分極を引き起こす。これをシナプスの発火と言い、そこで生まれるのがシナプス電位。
このシナプス電位の大きさは脱分極の大きさと発火総量に依存するので、レセプターの数や、神経伝達物質の量と種類に影響される。

このシナプス電位がニューロン細胞体を刺激して、ナトリウム(あるいはカルシウム)チャンネルを開かせニューロンを発火させる。このときに生じるのが活動電位と呼ばれる電気パルスだが、これは(特に大脳新皮質に配線された有髄神経回路では)普通の電流とは異なってオン・オフだけなので、大きなシナプス電位で大きな活動電位が生じるわけではない。ただ、シナプス電位が低いレベルであるとニューロンは発火せず活動電位も生じない。つまり閾値がある。

ところが、高頻度でシナプス電位を発生させると、おそらくシナプスにおける神経伝達物質が高密度になり、シナプス可塑性(シナプスの増強)が起こり、微弱であってもニューロンを発火させ、信号が伝わりやすくなる。数分間の間、「短期記憶」がシナプスに作られる。「何回も短時間に読めば、繰り返せば覚えやすい」というのは実感するところ。ところが、忘れるのも早い…
もしこのシナプスの増強が恒久的であれば「長期記憶」となり、忘れずに「知」の体系に組み込まれる。おそらくレセプターが増えるなどのシナプスの構造そのものが変化して「長期記憶」が実現するのだろう。

>ここで、一つの神経細胞の根元(樹状突起)にくっついてくる、他の神経細胞の先端(軸策)は3万個にも及ぶそうです。そのうち、少なくとも約100個以上の軸策から信号(シナプス空隙な内の神経伝達物質)を得てはじめて、この神経細胞の根元から先端に電気信号を流すという判断をします。<

神経細胞1000億はあると言われるが、それぞれの細胞には1万個~3万個のシナプスがあるので実に膨大な数。活動電位を発生させるにはシナプス電位が閾値を超えないといけないが、前述のシナプス可塑性のほかに、他のシナプスの同時的(協調的)な発火によっても活動電位が発生する。「興味関心があることやビックリする体験は(多くのシナプスが同期的につながるので)忘れない」「いろいろ関連付ければ(いろいろなシナプスが同時的に発火するので)覚えやすい」というのは日常的にも実感するところだろう。
参考「ヘブの法則」

>また、各神経細胞同士のネットワークは複雑に張り巡らされているます。そして、そのネットワークの部分的つながり易さごとに意味ある記憶になっています。そして異なる種類の記憶ごとの部分ネットワーク同士は、相互に神経細胞を使いまわしています。<(本田さん)

海馬の一部神経細胞でこれまでの定説を覆す事実=神経細胞が増殖するという事実が発見されているように、記憶しようとすれば記憶容量が増える(神経細胞とシナプスが増加)らしい。
しかし、それでも人類の必要な「知」を保持するにはシナプスの数は有限であり不足する。

そこでシナプスそのものよりも、むしろ細胞間同士のネットワーク(=神経回路の階層構造)こそが記憶の本体ではないかと考える。一対一対応(シナプス対応)のバラバラな記憶ではなく、記憶を構造化して「意味のある」体系として記憶する。記憶は神経ネットワークに保持されるという考えだ。
1つの神経回路が他とのつながり方でいろいろな意味をもつことになり、膨大で壮大な記憶ネットワークが脳内に形成されているのではないだろうか。

■限られたネットワークは記憶を強化する1(本田さん) [9]
>つまり人類の(眠った)能力とはこの記憶回路の繋がり方に(及び封鎖のされ方)起因するのではないかと思われます。サヴァン症候群はその領域が鮮明に絞られているが故に、逆に人類の脳回路の構造を示す大きなヒントになると思われます。

サヴァン症候群の分析にあたり、強化された記憶回路に注目が行きがちです。しかし、彼等は正常な社会適応が困難という状況にあります。よって、健全な人の記憶回路に比べ、特異な能力以外の記憶回路は少ないもしくは、機能が著しく劣っているという事実の方が重要ではないかと思います。

そこでまず、入力情報の取捨選択を司る、記憶の司令塔と言われている海馬での、記憶とニューロンネットワークの関係について整理します。記憶は、シナプスを介した神経細胞同士の物理的ネットワークと、そのネットワーク内での神経細胞の間の信号(電気.化学信号)の伝わりやすさとして保存されている、と考えられます。

そして、神経細胞内を流れる電気信号は、端から端まで流れるか、流れないかの単純な二つの現象だけです。次に、ある神経細胞に送られてきたシナプス経由の信号は、上記の電気信号(活動電位:強くハッキリしている)とは別の、小さな電気信号(シナプス電位)に変わります。

ここで、一つの神経細胞の根元(樹状突起)にくっついてくる、他の神経細胞の先端(軸策)は3万個にも及ぶそうです。そのうち、少なくとも約100個以上の軸策から信号(シナプス空隙な内の神経伝達物質)を得てはじめて、この神経細胞の根元から先端に電気信号を流すという判断をします。

また、各神経細胞同士のネットワークは複雑に張り巡らされているます。そして、そのネットワークの部分的つながり易さごとに意味ある記憶になっています。そして異なる種類の記憶ごとの部分ネットワーク同士は、相互に神経細胞を使いまわしています。

そのため、記憶と記憶は関連づけられたり、その中での優先序列や、創造(現状記憶の部分ネットワークから新たな統合ネットワークを作り出すことではないかと思っています。)が可能になるのだと思います。

■限られたネットワークは記憶強化する2 (本田さん) [10]

ある神経細胞が100個ほどの多の神経細胞からの信号を受けてシナプス電位をあげないと、活動電位(神経細胞の端から端まで流れる電気信号)は発生しない(記憶は思い出せない)と言うことですが、信号の流れやすさにはもう一つのメカニズムがあります。

大雑把に言うと、一個あたりのシナプス電位が2倍になれば、50個分の信号でよいということになります。つまり、シナプス自体の感度がよくなり一個あたりのシナプス電位が上がるということです。このことを長期増強記憶(LTP)とよびます。

メカニズムとしては、隠されていた受容体が表面に出てきて、反応受容対数が増えるということになります。そして、LTPがある状態では神経細胞の伝達スピードは上がり、かつ神経細胞総体の反応数も上がります。

そして、学習効果の高い(記憶のよい)動物(マウス)はLPTが高く、そうでないものはLPTが低く、愛情を持って育てられたマウスは学習効果(≒LTP)が高く、ストレスを与えて育てたものは、それが低い。また、情動を支配する扁桃体が活動するとLTPは大きくなるといいう結果が出ています。

これらは、記憶力は喜怒哀楽などの情動にと一体となることで高まる(つながりやすくなる)。そして、情動とは本能や共認欠乏などに色づけられた、意識状況ということだと思いますので、

>繋がりやすい=使われる頻度の高い記憶(回路)とは本能、共認上の欠乏と直結したもの、もしくはプラスの評価(充足)体験に直結したものである。それらは使用頻度も高く、多様に豊かに重ねあわされていく。

という仮説の補強事実になるのではないかと思います。

■記憶力を高めるメソッド(記憶のメカニズムの2)(吉国さん) [11]
「記憶の本質は、神経ネットワークそのものにある」ことを示唆する実験結果が『日経サイエンス5月号』に寄せられていた。
『日経サイエンス5月号』紹介のサイトからの抜粋記事。(http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0505/memory.html)

>消滅してもよい記憶と残すべき記憶。脳はそれをどのようにして決定し,どこから指令を出しているのだろうか。短期記憶も長期記憶もニューロン(神経細胞)どうしがシナプスと呼ばれる結合部でつながったときに生まれる。短期記憶ではシナプスが興奮して一時的に強化された状態になるが,長期記憶の場合,シナプスが恒久的に増強される。長期記憶のメカニズムがはたらくには,ニューロンの細胞核内にある遺伝子情報が読み取られ,タンパク質が合成される必要がある。ニューロンの発火後,核に向けて「記憶せよ」という情報が何らかの手段で送られているらしい。

 いちばん考えやすいのは,シナプスから核への経路にシグナル伝達分子が介在している可能性だ。著者たちはシナプスの役割を調べるために,ラット脳の海馬でシナプスの機能を阻害する実験をした。その結果,シナプスが興奮しなくてもニューロンに刺激を与えて発火させれば,長期記憶にかかわる遺伝子が活性化されることがわかった。しかし,ニューロンのインパルス(活動電位)によって開く電位感受性カルシウムチャネルを阻害すると,長期記憶に必要なタンパク質が合成できなかった。

 この結果から,記憶の固定に不可欠なのはシナプスではなく,ニューロンの発火そのものであることがわかる。個々のシナプスが直接メッセージを核に送るのではなく,活動電位によってニューロンの細胞膜にあるカルシウムチャネルが開き,核へのシグナル伝達経路が活性化して,遺伝子が働くのだろう。<(編集部)

ニューロンの発火そのものが(=神経回路内の興奮パルスそのものが)きっかけとなって、神経細胞核内の遺伝子が活性化し、新たなるタンパク質が作られて、シナプス構造に変化を与えて、短期記憶を長期記憶に変えているというわけだ。遺伝子がタンパク質をどう作っているかの問題よりも、私は次の点に注目したい。
つまり、シナプス電位の大きさや、同期するシナプス発火の量よりも、神経回路を流れる活動電位(インパルス)こそが重要で、それが神経回路内でどのように流れるかの方が記憶力を高める上で重要だということだろう。

本の記事ではさらに次のように述べている。
>単純に考えると、カルシウム量が遺伝子を制御し、どの遺伝子が活性するかはカルシウム濃度に応じて決まるように思える。
ところが観察の結果はもっと興味深いものだった。ニューロン内のカルシウム増加量は遺伝子制御にさほど意味はなかった。はるかに重要なのは、カルシウム量変化の時系列パターンだ。このパターンは、その引き金になっている神経インパルスの時系列パターンにそっくり重なっている。…(中略)カギを握るのは時間だ。<

どうも短時間に繰り返せばいいものではないらしい。長期記憶が進むには、一定の繰り返しリズム(池谷裕二氏が『記憶力を強くする』の本で紹介しているΘリズムのようなもの)が必要だが、どうもそのリズムも記憶対象によって異なるようだという。
このことは、脳力開発に有効な「音読」を進める上で、スピードやリズムの取り方が重要であるということ。何を音読かによって、異なるのかもしれない。

*『記憶力を高めるメソッド』を、この「時間」問題や、「同調性」「関連性」「探索」などのキーワードを抑えながら、次回考えてみたい。

■記憶力を高めるメソッド、(感謝の気持ち)(吉国さん) [12]

「質問がある」からというので、時間をとって教えた後で、「ありがとうございました」言って帰る生徒。そんな子供に対して『この子は伸びる』な、と感じる。

「ありがとう」と言わせている子供の源が、今や風前の灯の「我が師の恩」という序列規範であれ、親発の刷り込み規範であれ、子供の潜在思念発であれ、「ありがとう。ありがたい」という感謝の気持ちを持っている生徒は、記憶力が高まるというのが実感だ。

それでは、なぜ感謝の気持ちがあれば記憶力は高まるのか。感謝の気持ちがどのように記憶回路に関わるのか。

感謝すると、脳内の神経伝達物質であるエンドルフィン濃度が高まる。エンドルフィンの脳回路での重要な役割として、覚醒物質であるドーパミンの滞留時間を延長し、シナプスでの滞留濃度をあげる働きがある。つまり、感謝→エンドルフィン濃度の増加→シナプス活動電位の上昇→脳の記憶回路が活性化→そして、長期記憶が容易く実現する。
特に、エンドルフィンは脳内の(というか体内の)いたるところで分泌される充足(伝達)物質なので脳回路全体が同期連動して活性化しやすいのだろう。だから、「感謝」の気持ちがあれば、なんであれ記憶回路が活性化するのだが、心底から感謝すればするほど伝達物質量は違うだろうし、本能・共認・観念の本源の部分から活性化するだろうから、記憶力の高まり方に違いが現われる。

逆に、自我回路発の感謝があるとすれば、自分にプラスだからということしかないのだが、「好きこそものの上手なれ」と言われるように、極めて限定的な記憶回路だけが鍛えられ、脳全体の記憶力が活性化するわけではないだろう。
実はほとんどの神経回路(脳回路)は、フィードバックシステムを持っている。ドーパミン回路(主要な伝達物質がドーパミンということ)のA10神経の中には共認回路(おそらくギャバ回路)で制御されているものが多いが、ドーパミン回路でドーパミン回路が制御している部分もあって、おそらく、自我回路発で感謝するとドーパミンがこの閉塞的な回路に過剰に流れつづけるのではないかと思う。だから、何時までも忘れずに活性化するが、閉塞的な回路ゆえに、何度も繰り返しながら妄想化するのかもしれない。

ところで、生成過程でエンドルフィンと同時に作られるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)は、元来、ストレスに抗して意識の動機付けや集中力を高める働きがあると言われる。興奮を持続するという観点からすればエンドルフィンに通じるものがある。人類において、泣くときには強く分泌されるそうだ(渡辺さん)。「泣きながら勉強した」という経験は、謝罪の心があれば記憶力が高まるということを示しているのかもしれない。「感謝と謝罪」は、記憶回路から見ると同じはたらきをするようだ。

*「泣いていやなことを忘れる」というのは、直接忘却するのではなく、むしろ泣くことで脳がピリッとして(脳回路が活性化して)、エンドルフィンも分泌され、新しい記憶回路(ネットトワーク)が形成されるから、結果的に過去の記憶が忘れられていくのかもしれない。

*確かに、「感謝」の気持ちは大事。同時に、同じことかもしれないが、本当に困難な問題を突破していく人(子供)は、「肯定視」が強い子のように思う。

■テレビが同化機能=記憶力の低下を引き起こす? (廣重さん) [13]
>それでは、なぜ感謝の気持ちがあれば記憶力は高まるのか。感謝の気持ちがどのように記憶回路に関わるのか。

 この投稿を読んで、(長期)記憶力というのは、同化機能=感情と密接に関係しているとあらためて思いました。
 長期記憶は感情や観念(言葉)で結びついて、情景含め記憶化される。だから“感謝や謝罪という感情=相手と同化して充足を感じる“とともに記憶は定着されてくると考えられる。たしかにそれ以外に興味・関心(+側)や人工的でも記憶に定着可能だが、実感として分かるがめちゃくちゃ労力必要。
 同化機能の低下という観点で考えた場合、たしかに期待封鎖(サイレントベイビーやいじめによる期待封鎖が原因)が原因の一つだと思う。一方、同化機能ということで考えればテレビの影響もあるのではないか。生物は外圧に適応するために潜在思念で瞬時瞬時に同化している。これが何も考えずボーット見ている(一方的に受けるだけの)テレビの影響で、同化機能の低下を引き起こしていることも一因だと考えられられないか。まさに昔、親からよく言われた”テレビばっかし見てるとバカになるよ!”では?

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