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地域で学校を支える地域本部

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「東京都杉並区和田中学校で、公立学校で初めてPTA廃止」というニュースが配信されました。

和田中では民間人から登用された藤原校長がこれまで様々な改革を実施してきているようです。

5年前から「地域本部」という試みを既に実施しており、今回、PTAは地域本部の中の「現役保護者部会」として位置づけられるという。

文科省でも今年度から「学校支援地域本部」を全国に設置していく方針になったもよう。

藤原校長は任期満了で今年3月末に退任するようですが、改革の総仕上げとして残してゆくことになる取り組みについて、どんなことを目指しているのか調べてみました。

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3月22日配信のニュースでは以下のような解説がされています。

杉並・和田中「脱PTA」宣言 地域ぐるみの支援組織に [1]

数々の教育改革で知られる東京都杉並区の区立和田中学校は22日、PTAの役職を簡素化し、区のPTA協議会(P協)から脱退することを決めた。4月以降、PTAは地域の協力者で作る「和田中地域本部」の一部門となる。文部科学省は新年度から、和田中をモデルに「学校支援地域本部」を全国1800カ所に置く方針。都市部を中心にPTAの担い手は減っており、保護者だけに頼らない和田中方式は広がる可能性がある。
3月末に任期満了で退任する藤原和博校長が、この日の学校運営協議会で報告した。
(1)PTAは地域本部の一部門の現役保護者部会とする
(2)各クラスの保護者から役員を選ぶ仕組みは変えないが、会長は選出せず役職も少なくする
(3)区内のPTA役員が集まる会合には今後参加しない――が主な内容。

 1月のPTA運営委員会で方針は承認されており、5月の総会で正式決定する。
藤原校長は「慣例で続けている仕事をリストラし、必要なことに力を注ぎたい。全国のPTAの参考になるのではないか。親と地域の人が協力し学校を支える態勢を強めたい」と話す。

 一方、文科省は、中学校区ごとに学校支援地域本部を設けようと、08年度予算案に50億4000万円を盛り込んだ。

 地域本部には、教職員や保護者に加え地域の代表者が入り、部活動の支援や、学校環境の整備、登下校のパトロールなどでかかわる。また、理科の授業やキャリア教育、自然体験などを支援できる専門家を探し出して、有償で招く。

●「公立初のPTA廃止」といったことが話題を呼んでいますが、藤原校長のコンセプト [2]は明快。

○学校の役割は子供を社会化すること
○かつては家庭、地域、学校の3者で子供の社会化に取り組んでいたが、家庭や地域社会の教育機能が失われ、学校に全ての期待が集まり、教員の負担が過重になっている。現実的に無理な状況。
○先生が授業や部活に集中できるように、家庭や地域が担っていた子供たちを社会化する機能を補完するために地域本部を設置し、意欲のある人たちを地域やボランティアから募り、授業と部活以外の仕事を担ってもらう。
○和田中では、[よのなか]科の授業公開を毎週行い、学校教育改革や地域社会の復興に関心のある人を集めるようにして学校や教員とのネットワークを生み出す。

●和田中の学校支援本部はプロジェクト型のネットワーク組織
学校から「強制される」のではなく、地域の学校のために「貢献」する関係が成立。
年間100名を超えるボランティアを学校支援本部がマネジメントを行い、子どもたちの現状、学校の現状に即して様々なプロジェクトを立ち上げている。
⇒読書振興(毎週放課後:15:00~17:00:図書室改造・司書ボランティア):生徒の居場所づくり
⇒ITC振興(PCスキル向上、情報編集力向上):iキッズ計画
⇒学力振興(土曜日寺子屋、英語コース):土曜日寺子屋・英語アドベンチャーコース
⇒スポーツ振興(部活時)
⇒文化振興(学校美化、地域交流):壁画アート
⇒緑化振興(学校緑化計画、芝生整備・管理):グリーンキーパーズ

●支援本部の核になった事業
①「よのなか科」のような開かれた授業
地域の大人、ゲストティーチャーのファンができ、学校を支援する幅広い協力者の支援ネットワークができる

②図書館の改造
本好きのPTAのOB、OGたちのネットワークができる

③土曜日学校の開設
教師志望の学生ボランティアのネットワークができる

④学校の緑を守るグリーンキーパーズ
ガーデニング好きのPTAのお父さんや地域の老人たちのネットワークができる

藤原校長に明快なコンセプトがあり、父兄や地域の人たちとの話し合いの中から支援本部が実現していったようです。
以下の動きが新校長が赴任した平成15年3月から6月までの間に一気に進展。

⇒以前の和田中はのんびりとした良い学校。しかし生徒数が伸びず、このままいくと廃校になるかもしれないという小規模校。そこに、教育改革の旗印とともにバリバリの民間人から登用された校長が来るという知らせ。他県では民間人校長の自殺という事件もあり、とにかくPTAが新校長を支援しようとしたのが支援本部前身の始まり。

⇒校庭の芝生化の動きに対応して有志によるグリーンキーパーズ誕生。土曜日の有効活用のために他校の事例を参考に「土曜日寺子屋」が発足。図書(R)、PC(P)、グリーン(G)を統合したRPG倶楽部発足。(支援本部の前身)

⇒RPG倶楽部と土曜日寺子屋、図書室の自主運営を主活動にした支援本部が発足。

子供を社会化するという役割は学校だけでは担えないという現実を直視して、学校と父兄が一緒にどうするかを考える場が作れたことがポイントだったと思われます。

校長は教育改革という期待に応えて民間から応募して選抜されたわけですが、父兄の側でも改革の必要性は潜在思念では共有されていたのだと思います。
それに加えて、在校生が減少傾向で廃校になるかもしれない、民間人校長の自殺というニュースもあり自分たちが支える必要があるのではないか、という状況認識も共有されていたのだと思います。

まずは、地域や父兄の中でみんな期待に応えようとする人たちが動き出し、そこからネットワークが広がっていったという経過はまさに共認社会の実現の流れを示唆しているようにも見えます。
これから、さらにいろいろな活動の広がりが期待できそうです。

義務で参加させられていたこれまでのPTAはもはや無用だし、家庭・地域・学校という3権分立の発想自体もはや時代遅れになりつつあるのではないでしょうか。
学校という場を核にしてみんなで子供を社会化する」という方向に、現実は進み始めていると言えそうです。

byわっと

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