- 感謝の心を育むには - http://web.kansya.jp.net/blog -

学校ってどうなってるの?12~今、学校で何が起きているのか2「教育委員会」とは~◆教育委員会事務局と混同してはいけない◆

日経BPネットの教育界に転身し民間人校長となった杉並区和田中学校の校長である藤原和博氏の記事から転載します。2006年の記事です。

md1_img2.gif

日経BP記事
今、学校で何が起きているのか「教育委員会」とは1 [1]
今、学校で何が起きているのか「教育委員会」とは2 [2]
今、学校で何が起きているのか「教育委員会」とは3 [3]

★教育委員会とは?★

1】教育委員と「教育委員会事務局」とは違う?
・教育行政を実際に行うのは「教育委員会事務局」
・教育委員は学識経験者ではあっても、教育行政の専門家ではない。
・教育委員は、いわば“社外重役”であり、教育政策の方向性を決めるスタッフ的な役割をしているにすぎない。つまり、“名誉職”という色彩が強いのだ。地方によっては教育長も完全に名誉職であって、ほとんど仕事らしい仕事をしていない例もある。

2】なぜ、こんな複雑な体制なのか?
・日本が戦争手段として軍国主義を学校教育に持ち込み浸透させていったとGHQは考えた。だから、教育現場がそうした国家主義の影響を二度と受けないように、学校教育を国家の支配からはずし地方の自治に委ねることを画策した。そして、教育政策を、自治体の長からも独立した機関である「教育委員会」に担当させることを命じた。しかし、教育委員会は弱体化し、事務局が実権を握っている。
・制度上は、教育委員会事務局を率いる教育長は、首長の支配からも独立した対等の立場だが、自治体の首長の指導力におうところが大きく、肥大化している。

3】教育委員会は何をしている?
・専門家でない集団(多くは現役引退後)が自分の経験したことをもとに感想だけ述べる会は、日本社会のあちこちに存在する。相談役とか顧問とかの会である。教育委員による会議「教育委員会」も、多くはそのような無益な会に成り下がってしまっているのが実情。

4】教育委員会事務局は何をしている?
・幼稚園、小学校、中学校の園児、児童、生徒の募集、学校希望(選択)制募集事務、教育相談、障害児教育、就学援助、特別支援教育などのサポート、教育センターや研究所を持ち、教職員の研修所や発達障害などの相談窓口、給食のお世話から学校の適性配置(統廃合)まで膨大。
・学校教育のほか、社会教育関連の仕事もある。図書館や科学館、児童館、文化ホールの運営。学校施設を放課後、夜間、休日に解放し利用者団体協議会に貸し出すこと。文化財の保護やスポーツ・文化の振興も「生涯学習」世代の拡大など
・クレーム処理も・・・

5】教育委員会事務局にある「指導室」ってなに?
・教員の人事と教え方そのものの指導。イジメや事件についての情報、各学校から指導室が集約し、必要なら指示を与える。
・IT教育の方向性、総合学習の研究、指導力不足教員の指導、教員や校長の研修、指導要領に沿った各学校の教育課程編成上のチェック・・・。現場の教育の質の管理が一手に委ねられる。
・人事は学校の設置者である市区町村の行政職員が扱うが、教務の指導は指導主事の仕事だ。
・指導主事も例外ではなく、文書業務の嵐の中で機能低下を起こしている。

という教育行政の実態が明らかになってきたように思います。

※上記記事の詳細は、続きで記載してあります。

続きを読む前に、クリックお願いします。

日経BP記事
今、学校で何が起きているのか「教育委員会」とは1 [1]
今、学校で何が起きているのか「教育委員会」とは2 [2]
今、学校で何が起きているのか「教育委員会」とは3 [3]

より

 今回は、「教育委員会」(以下、教委と略すことも)というあいまいな存在を、読者にキッチリつかんでいただこうと思う。そうでないと非常に安易な「教育委員会無用論」が闊歩(かっぽ)することになるからだ。そもそも、「教育委員会」とは何か、どういう組織かを説明する。さらに、教育委員会と混同されやすい「教育委員会事務局」も詳説したい。

◆教育行政を実際に行うのは「教育委員会事務局」
まず、用語の確認をしておきたい。

 自治体には5人程度の「教育委員」がいて会をなし、その「教育委員会」の代表が「教育委員長」である。表面的にはこの人たちが、その自治体の教育政策のすべてを決めることになっているから、ひとたび教育問題が起これば、責任者はこの「教育委員会」だということになる。

しかし、実態はいささか異なる。

 教育委員は学識経験者ではあっても、教育行政の専門家ではない。実際の教育行政は自治体の1、2フロアは占めるほどの人員を擁した「教育委員会事務局」が担う。そのヘッドが教育委員の1人でもある「教育長」だ。この「教育委員会事務局」のことも教育委員会と呼ぶから混乱が起きるわけだ。

 会社で言えば、自治体の首長(区役所なら区長、市役所なら市長)は社長に例えられる。会社でいう「役員会」のメンバーは、自治体の場合、通常、4人で構成される。首長の他に、助役(副社長)と収入役(専務取締役財務担当、昔の出納長)、そして教育長(さしずめ常務取締役教育事業担当)である。ほとんどの政策は、実際にはラインの長である教育長に率いられた教育委員会事務局が文科省や都道府県教委の顔色を見ながらつくってしまうから、教育委員の活躍の余地は極めて少ない。教育委員は、いわば“社外重役”であり、教育政策の方向性を決めるスタッフ的な役割をしているにすぎない。つまり、“名誉職”という色彩が強いのだ。地方によっては教育長も完全に名誉職であって、ほとんど仕事らしい仕事をしていない例もある。

 なぜ、こんなややこしいことになっているのか。説明しようとすると、戦後、GHQ(連合国軍総司令部)が日本の教育制度改革に手をつけた歴史にまでさかのぼらざるを得ない。

 日本が戦争手段として軍国主義を学校教育に持ち込み、「天皇制」や「神道の教義」を「修身の教科書」などを通じて浸透させていったとGHQは考えた。だから、教育現場がそうした国家主義の影響を二度と受けないように、学校教育を国家の支配からはずし地方の自治に委ねることを画策した。そして、教育政策を、自治体の長からも独立した機関である「教育委員会」に担当させることを命じた。

実際には、この制度はほとんどの自治体で機能せず、東京都の教育委員会の場合など一部の例外を除き、教育委員会は弱体化している。そして、教育委員会事務局が肥大化した。

 また、制度上は、教育委員会事務局を率いる教育長は、首長の支配からも独立した対等の立場である。にもかかわらず、今日、相応のスピードを持って教育改革を実現している自治体を観察すれば、それがすべて首長のリーダーシップに負うことが証明できる。首長が強力な教育長に腕を振るわせているケースは、東京都の品川区、杉並区や京都市、金沢市などで顕著だ。品川も杉並も、教育現場を知り抜いた教員出身の行政職が教育長を務めている。「学校希望(選択)制」、「小中一貫(連携)教育」、「教員のFA(フリーエージェント)制」、「学校や教員への第三者評価」、「校長への大幅な権限委譲」や「知恵を出した学校への重点投資」などの先進的な施策は、これらの自治体が切り拓いた。

◆教育委員が“名誉職”である理由
教育委員そのものは名誉職であると書いた。例を挙げよう。

 市区町村の教育委員の存在がクローズアップされるのは、教科書の採択のときくらいだろう。それでも、中学では9科目もある教科書のすべてに目を通して検討するのは無理がある。なぜなら、それぞれの教科で5?6社の出版社が採択競争に参加するし、1年から3年生までのバージョンがあるから、100冊以上の教科書を読み込んで比較する必要が生じるからだ。教員や校長も検討委員会を開き意見を述べるが、教科書の採択には現場教員の思想が入り込んではならないという深慮遠謀から、教育委員の“専権事項”となっている。だが、実際に教育委員が教科書のすべてに目を通しているわけではない。これが、“名誉職”たるゆえんと言っていい。

 たとえば、英語のようにプリントやビデオ、カードなど補助教材の多い科目は特に、専門家でなければ比較は容易ではない。他の教科でも教科書準拠で合わせて使えるサブ教材の重要性が増してきている。このような理由から、実態は、「指導室」という教育委員会事務局にあるセクションが、根回しして決めていくのだ。

 専門家でない集団(多くは現役引退後)が自分の経験したことをもとに感想だけ述べる会は、日本社会のあちこちに存在する。相談役とか顧問とかの会である。教育委員による会議「教育委員会」も、多くはそのような無益な会に成り下がってしまっているのが実情だ。だから、廃止論も出る。私見だが、教育委員は、もはや無用の長物かもしれない。

 ただし、教育委員会事務局を廃止するわけにはいかない。その仕事が、学校運営になくてはならないものだからだ。なにより自治体は、学校の設置者なのである。

◆市区町村の教育委員会の仕事
 指導室というセクションの役割について述べる前に、教育委員会事務局の広範な仕事をざっと眺めてみよう。都道府県教委は高校の運営に責任を持ち、市区町村教委は幼稚園と小中学校の運営に責任を持つ。ここでは市区町村教委に話を絞る。

 幼稚園、小学校、中学校の園児、児童、生徒の募集。東京では半数以上の自治体で学校希望(選択)制が始まったから募集事務は年々複雑になっている。教育相談、障害児教育、就学援助、特別支援教育などのサポート。教育センターや研究所を持ち、教職員の研修所や発達障害などの相談窓口としている自治体も多い。その他、給食のお世話から学校の適性配置(統廃合)まで検討事項は膨大だ。

 学校施設は建ってから30年、40年と経過しているものが多く、日々いろいろな場所が壊れていく。そのスピーディな修繕も重要な仕事だ。校舎、校庭から、コンピュータルーム、プール、体育館。コンピュータルームがあれば、入れる機種の選定やネットワークの設定、プリンターは、使う紙はと細かい仕事が無数に発生する。

 イチョウの木のてっぺん付近にカラスが巣を作り子ども達を威嚇する事件があれば、木に登って巣を取り除く。学校の広い敷地の緑も教育委員会と学校が維持している。だから、その木の枝の一部が民家にかかって「枯れ葉が落ちてきて困る!」というクレームがあれば、慌てて枝を切りにいく。

 学校教育のほか、社会教育関連の仕事もある。図書館や科学館、児童館、文化ホールの運営。学校施設を放課後、夜間、休日に解放し利用者団体協議会に貸し出すこと。文化財の保護やスポーツ・文化の振興も「生涯学習」世代の拡大とともに重要度を増した。

◆ハードではなく、ソフトを扱う指導室
 教育委員会事務局の仕事の多くは、このように学校の環境を良くし、入学に伴う事務処理を円滑にし、校舎を維持し、教科書や教具を整備し、通常の学校システムでは支えきれない人々のサポートを行うもの。

 これに対して、教育委員会事務局にある「指導室」というセクションが教育の質そのものにかかわる仕事を担っている。地方によっては「学校教育課」ということもある。

 すなわち、教員の人事と教え方そのものの指導である。学校のハードではなく、ソフトよりの物事を扱う。イジメや事件についての情報も、各学校から指導室が集約し、必要なら指示を与える。

 IT教育の方向性、総合学習の研究、指導力不足教員の指導、教員や校長の研修、指導要領に沿った各学校の教育課程編成上のチェック・・・。現場の教育の質の管理が一手に委ねられる。ここにいるのは、市区町村の行政職員と都道府県に本籍のある指導主事という2つの種族だ。人事は学校の設置者である市区町村の行政職員が扱うが、教務の指導は指導主事の仕事だ。そして、その指導主事も例外ではなく、文書業務の嵐の中で機能低下を起こしているのである。

[4] [5] [6]